竹製フルート No.8 (F 管 )
歌口を節(ふし)側に設けたアルトリコーダー運指の竹製フルートで、管尻穴は無し(オープン)タイプです。
1.管サイズの設定
竹材は切り出したままの寸法(全長約540mm)ですが、先ず、管尻側から細長い丸棒を差し込み、節(ふし)底までの寸法を測定し、逆算して節底(=反射板)から20mmとなる位置にφ10mmの穴を開けました。
この状態(管尻~歌口間≒485mm)で音高を測定すると、E♭4に近い音高が出ており、さらに寸法を少し短く修正し480mmにてジャスト E♭4(311Hz)の音高となりました。
今回は、主音が E♭4のフルートを作成するわけではなく、このデータから、これと相似形となるF4スケールフルートの歌口位置(Ls)を予想します。
Ls=(E♭の歌口位置×E♭の周波数比)/Fの周波数比=(480×1.189/1.335≒ 428 (mm)
歌口位置(428)+反射板位置(20)=448mmは、奇しくもオープンケーナ各スケール近似サイズ表の値(下表・赤枠)と良くマッチしています。
これを踏まえ、少しずつ管尻~歌口間の寸法を短く修正したところ、予想通り428mmでF4の音高(少し低め)となりました。
2.指穴開け位置の設定
この形状でリコーダー運指のものは初めてなので、No.4~7で使用した「リコーダー運指フルートの指穴位置計算表」のワークシート(下表)を手直ししました。入力値は、歌口位置428mm、内径φ18mm、及び、反射板位置20mm(歌口中心からの距離)です。
3.穴開け作業
穴開け位置は、先ず管の表面にマスキングテープを貼り、その上から簡易CADで作成した穴開け位置図面を両面テープで固定します。管の内外径や形状的な違いを考慮し全体に指穴径を予想穴径より小さ目(予想穴径より、-0.5mm程度)に開けます。
4.調 律
下表に従って低音側(F4~)から順次調律を行います。(半音は平均律音階の周波数表を参照)
各指穴の修正加工は、常に穴の内側を少し斜め(円錐形)に削るよう意識しています。径寸法はそのままでも、特に管尻側を斜めに削ることで若干音程が上がるようです。
5.竹製フルート(No.8) F管オープンタイプ 完成図
下記が完成した竹製フルート(No.8)です。修正後の各指穴径は下記図面の寸法(0 ~+0.3mm)となります。又、第1と第2指穴開け位置を中心から少し離してありますが、図面寸法は円周上の寸法です。
 運指表はこちら
6.評 価
竹材の細い方に歌口が有る為、当然内径はテーパー状に広がっており、第1~4指穴の径が予想より大きくなっています。竹製フルート(No.4~7)と同様に指穴位置計算表を使用しましたが、この場合(管尻穴無しタイプに変更)も上手く機能したようです。
この形状のメリットは、管尻側を短く修正するだけで主音(最低音)の設定ができることと、反射板の材料(コルク)が不要なことではないでしょうか。又、第1指穴のサイズが少し大きくなる為、指穴を半開にした時の音(G♭/F#)が出し易くなります。
デメリットとしては、2オクターブ高音域(E6以上)の音出しが難しくなることで、運指を変えることやメリカリ技法(歌口と唇の位置関係を変化させ音高をコントロールする)など演奏上のテクニックが必要となります。
この不具合は多分、管内径サイズ(特に管尻側)によるものと思われます。管の内径をもう少し細くするか、或いは設定スケールをこれより高いもの(G or Aスケール)にすれば改善が見られるかも知れません。
◆ ◆ ◆
尚、余談となりますが、フラウト・トラヴェルソ(Flauto Traverso)という現在のフルートの前身となった楽器が有ります。
代表的なものは、6ホール+1キーで作られたシンプルな構造で、全体を3~4分割できるようになっており、管の内径は上管接続部から足部管に向かってテーパー状に細くなっています。
フラウト・トラヴェルソ(木製)
このようなテーパー状のデザインが採用されたのは、特に2オクターブ以上の音を出す際の音程が改善されることや、その音程を確保しつつ各指穴位置が自然に手を広げた範囲の位置に配置できることのようです。
下表はフラウト・トラベルソの管全長(反射板~管尻間寸法)を100%とした指穴位置のパーセンテージ(全長比率)、該当する位置の管内径(*)を100%とした指穴径のパーセンテージ(管径比率)を表します。
* 推測ですが上管接続部での内径はφ19mm±1、足管接続部ではφ15mm±1となるテーパー(1/50~1/60)加工が施されているようです。
フラウト・トラヴェルソ資料(推測値)
手持ちの材料は全てケーナ作成用のものなので、このようなオープンタイプのフルートを作成するとどうしても管尻側が広がった形状になってしまいます。
下図のように、内外径の太い方に反射板となる節(ふし)が有るような竹材が入手できれば良いのですが...
 
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