ヘッドスクリューのコルク交換 タンポの作成
ジョイントコルクの取り付け タンポの隙間調整とキーの組み立て
タンポの基本構造 キー開閉制御用スプリング
プロローグ
 このページは、自己流で行ったピッコロのリペア(修繕)についてまとめたものです。
以下のコンテンツは、あくまでも個人が行ったリペア手段としての一例です。
Yahoo!オークションで、YAMAHA YPC-31 という古いピッコロ(ジャンク品)を入手しました。
オークション出品時 入手後に清掃を行った状態
このモデルが販売されたのは1970年代とのことなので既に40年以上経過したものです。
不足しているパーツは有りませんが、キー表面(メッキ処理)の腐食による凸凹が目立つ為、細目の紙ヤスリと金属みがき剤を使用して、泡状の腐食痕を補修しました。
メッキが剥がれてしまうのでは...と心配しましたが、予想以上にメッキ層が厚く、仕上がりは上々です。
ジャンク品として入手したものなので仕方が有りませんが、以下のようにリペアが必要な幾つかのパーツが有ります。
頭部管ヘッドスクリューのコルクが老朽化しており簡単に抜けてしまう。
頭部管のジョイントコルクが取れて無くなっている。
キーレバー等のパーツに貼り付けてあるクッション材(コルク)の一部が剥がれて欠損している。
すべてのキーはタンポが経年硬化しており、内3箇所はタンポが取れて無くなっている。
本体中央部のA♭(G#)キーにダメージ(歪み)が有り、キーレバーがスムーズに作動しない。
別ページのフルートリペアと同じく自己流となりますが、今回はピッコロのリペアに挑戦してみたいと思います。
分解してパーツをおおまかに分類
ヘッドスクリューのコルク交換
 ヘッドスクリューのコルクが縮んで硬化しており、簡単に抜けてしまう状態なのでコルクを交換します。
先ず、先端のクラウン(ローレットを施したキャップ)を外し、コルクを挟むように止めてあるナットを外しました。
① 古いコルクを除去する

ナットを外してもコルクが抜き取れない為、このようにカッターナイフで切り取ることで除去しました。
② コルクを入手する

近所のホームセンターで、コルク栓(中国製)を購入(φ19×16×17mm)コルクの材質は、余り良いものでは有りません
③ 電動ドリルにセットする

長さ方向を16mmに削り、中心にφ4mmの穴を開け、ネジを通してからナットでコルクを固定します。ナットの部分を電動ドリルチャックに挟みます。
④ コルクを加工する

電動ドリルを回転させ、荒いヤスリでコルクを円筒状に加工します。ヤスリの目を順次細かくしながら、慎重に外径サイズを調整します。
⑤ コルク外径を仕上げる

頭部管の内径(φ11mm)に合わせて、さらに外径を調整します。細くし過ぎないよう、又、表面はできるだけフラットになるように仕上げます。
⑥ 反射板位置をセットする

クラウンを取り付け、コルクを押し込んで反射板位置を正しくセットします。
クリーニングロッド(付属品)の先端より7.5mmの位置に、位置合わせ用の刻み線が入っています。
ジョイントコルクの取り付け
 ジョイントコルクは、入手した時から既に取れて無くなっており、これも自己流の補修を行いました。
① コルクシートを入手する

ホームセンターで、シート状のもの(中国製)を購入(21×280×1mm)同サイズが6枚も入っています。こんなにも必要ないのですが...
② 適正サイズにカットする

先ずは、幅8.5mmで適当な長さに切り取ります。ジョイント部の溝に巻き付けて約4mm位オーバーラップする長さでカットします。これは裏面の紙を剥がすと糊が付いているタイプです。
③ コルクを溝に固定する

コルクの先端部分を図のようにクサビ形に加工してから溝に沿って巻き付けオーバーラップ部のみ少量の瞬間接着剤で固定し、接着乾燥後、不要部分をナイフで切り落とします。
④ 接合部の修正
このコルクは糊付きで、かなり接着力もある為、敢えてボンド等の接着剤を使用せず、このまま溝に合わせて固定しました。
接合部の突起は平ヤスリやメッシュヤスリ等で修正します。
⑤ コルクの表面仕上げ

木工用メッシュヤスリ(#600)を使用して表面を仕上げます。
金属メッキ部分を傷つけないように養生テープを巻いてガードします。
⑥ はめあいの微調整

好みのキツさ(はめあい公差)になるよう微調整を行います。コルクグリスを塗るのは、はめあいの程度を確認してからにします。
タンポの基本構造
 タンポを作成するにあたり、取り外した古いタンポの基本構造を調べてみました。
このピッコロには大きさの違う3種のタンポが取り付けられています。タンポを包み込んでいるスキンは老朽化し脆(もろ)くなっており、簡単に剥がすことができました。
タンポの基本構造はすべて同じで、フェルト製パッドとボール紙、それにスキン(1枚重ね)で構成されています。
写真左端がスキンを剥がす前のタンポ、中央と右端が分離させたフェルトとボール紙です。大きいサイズから順に並べて、タンポA(φ10mm)、B(φ8mm)、C(φ7mm)としました。
フェルトの厚みは長期間の乾燥放置による収縮を考慮して2mm位と推測しました。 又、ボール紙は約0.5mmの厚みが有ります。
タンポの種類 タンポの基本構造
右の図は、タンポ皿に固定されたタンポの基本構造を示しています。ピッコロで使用されるような小さなタンポは、一般的にシェラック(shellac)と呼ばれる樹脂製の接着剤(バーナで溶かして使用)で固定されています。
タンポの作成
 タンポ作成方法について説明します。 (注: 以下は、あくまでも作成例です)
4.1  タンポ基本構造の作成
当初は、解体した古いタンポの基本構造(フェルトとボール紙)を再利用してスキンのみの修復を行う予定でしたが、フェルト面の硬化やホール痕跡などのダメージが有る為、やはりタンポを新品に交換することにしました。
しかしながら、この機種にマッチしたタンポの入手が難しいことや、もし入手できたとしても多分高額になると思われる為、今回のリペアでは、有り合わせの材料を使用することでタンポを自作してみました。
① 革抜きポンチを購入
フェルト(パッド)やボール紙(台紙)を正確な円形に切り取る為に革抜きポンチを3種類(7・8・10mm)購入しました。
② フェルト材を購入

フェルト材は、手芸用品店で購入しました。(180mm角/厚さ2mm)
③ ボール紙の打ち抜き

革抜きポンチでボール紙を打ち抜き台紙を作成します。
表裏に印刷のある厚さ約0.5mmのものを利用しました。
種類毎に必要な個数を作成します。
④ フェルトの打ち抜き

革抜きポンチでフェルトを打ち抜きパッドを作成します。
これも種類毎に必要な個数を作成します。
⑤ 今回作成した基本構造

右図は、作成した各タンポ基本構造です。
左から、タンポA用(φ10mm×4個)のフェルトとボール紙、タンポB用(φ8mm×5個)のフェルトとボール紙、タンポC用(φ7mm×6個)のフェルトとボール紙)が並んでいます。
4.2  乾燥スキンシートの作成
タンポ作成の必須材料であるスキンは、別ページにある「フルートのリペア」で使用したソーセージ用の塩漬け天然羊腸の未開封のパックが未だ4個も残っている為、これを使用します。(詳細はこちら
作成したスキンシート

ガラス面に貼り付け完全に乾燥させてから、1枚づつ丁寧に剥がして写真のようなクリアファイルに挟み込みました。
前記の天然羊腸パック1個で幅40mm×長さ120mm位のスキンシートを14枚作成することができます。表面の各所に白く濁った汚れができていますが、多分材料に含まれる粘性の成分が乾燥したものと思われ使用上の問題は無いと考えます。
4.3  スキンシートを円形に切り取る
基本構造(フェルトとボール紙)を包み込む為に必要なサイズを暫定的に決めました。タンポ表面の面積と厚み分、及び糊しろを考え、タンポA(φ22mm)、タンポB(φ19mm)、タンポC(φ18mm)としました。
スキンシートをカッターで切り取る際のガイド(治具)として硬貨の外周を利用しようと考え、そのサイズに近い硬貨である①日本国5円硬貨(タンポA)、②米国1セント硬貨(タンポB)、同じく③10セント硬貨(タンポC)の外径寸法を採用しました。
ガイド(治具)は、円形のもので必要なサイズに近い寸法で有れば材質は何でも良いのですが、出来ればカッター刃先が外周に食い込まないように金属製のものが良いと思います。
スキンサイズに切り取る

例えば、タンポAのスキンサイズは、5円硬貨の外周に沿ってカッターで切り取ります。
できるだけ汚れ(キズ)の少ない部分を選択します。
作成したスキン(3種類)

1シートでこれらのタンポサイズが6~7枚作成できます。
タンポBとタンポCのスキンサイズは余り差がないので、同じ大きさにしても良いかも知れません。
尚、今回はタンポの耐久性を良くする為、スキンを`2枚重ね´仕様とします。 従って、作成するスキンの枚数は、Aタンポ用(φ22)が8枚、BタンポとCタンポ兼用(φ18~19mm)が22枚の合計30枚必要となります。 タンポ作成時に失敗が有るかも知れないので、できればサイズ毎に2~3枚多めに作成しておきます。
4.4  タンポの作成手順(スキンの包み込み)
① タンポ作成用治具
タンポ作成用治具は、タンポ作成におけるスキンの包み込み工程を容易にする為に必要となります。
ここでは、エラストマーシート(ゴム製/厚さ3mm)を利用して、これに円形のガイド穴を開けたものを治具として使用します。 ゴム製なので、正しい径寸法に加工するのが難しい為、ドリル穴開け後に細い金属棒を熱したもので内径寸法を整えました。
タンポガイド穴(左からφ10.5mm、φ8.5mm、φ7.5mm)を囲むように、スキンのガイド穴(左からφ23mm、φ20mm、18mm)が有ります。
タンポのガイド穴は、タンポサイズより若干大きめの穴を開けます。又、スキンのガイド穴は、アクリル板(厚さ1mm)に穴加工したものを両面テープで固定してあります。
アクリル板のガイド穴は、スキンに基本構成(フェルト、ボール紙)を包み込み、スキンを糊で貼り合わせる際に位置がずれないようにする為のものです。
尚、今回はこのゴム製の治具を使用しますが、やはり、タンポ作成用治具は、加工が容易なプラスチック製かアクリル製のものが良いと思います。
但し、市販されているアクリル板はサイズが大きく意外に高価なので、このサイトの別ページ(フルートのリペア)では、右図のようなプラスチック製の定規を利用しました。
② 工具と材料を準備する

右は、タンポ作成(スキン包み込み)の作業で必要となる工具と材料です。
トレイ、水差し、水を少々、でんぷん糊、ピンセット、金属ヘラ、タンポ作成用治具、これに、作成したフェルト製パッド、ボール紙製台紙、各タンポサイズに切り取った円形のスキンを用意します。
でんぷん糊はスキンと基本構造を接着するのに必要です。金属ヘラは、自作したものでマイナスドライバーの先端を斜めにしたような形状となっています。
③ スキンと基本構造のセット

タンポ各サイズのガイド穴に、スキン、フェルト、ボール紙をこのような順序にセットし、基本構造をスキンで包み込みます。
④ トレイに水を一滴垂らす

この作業では水を使用する為、プラスチックのトレイを使用します。
先ず、タンポ作成治具を置く位置に水をほんの一滴垂らします。
⑤ タンポ作成治具を置く

水を垂らした位置に治具の穴を合わせて置きます。
治具のガイド穴にスキンとフェルトを重ねてセットします。
他の場所で、爪楊枝等でボール紙の表面に糊を塗布し、そのまま この位置まで移動させます。
⑥ タンポ中央を押し込む

糊を塗布したボール紙をフェルトの上に置き、中央部を金属ヘラで軽く押さえながら、ゆっくり押し込んで行きます。
止まるまで押さえて、このような形にします。
⑦ スキンを貼り合わせる

ヘラの先でスキンを内側に折り、貼り合わせます。既にタンポ全体が水で濡れています。
スキンの糊付け部分をできるだけ平らに仕上げてください。
⑧ 治具を持ち上げる

ガイド治具を持ち上げれば、タンポのでき上がりです。
未だ水で濡れている為、糊付け面を上にした状態で、他の平滑な場所に置き自然乾燥させます。
先ず、ここまでの手順ですべてのタンポ(以下)を作成します。
 タンポA (φ10mm) 4個
 タンポB (φ 8mm) 5個
 タンポC (φ 7mm) 6個
⑨ スキンをもう一枚重ねて`2枚重ね´仕様にする

初回作成のタンポをすべて乾燥させた後、前記の手順④~⑧をもう一度繰り返すことでスキンを2枚重ねにします。
市販の天然羊腸から作成するスキンの耐久性が少し心配なので、念の為に今回は`2枚重ね´仕様としました。
⑩ 作成したタンポを乾燥させる

ここまでのプロセスを終えましたら作成したタンポをすべて自然乾燥をさせます。

写真は完成した タンポA(φ10mm×4個)、タンポB(φ8mm×5個)、タンポC(φ7mm×6個)です。
以前に古い基本構造を利用したフルートのタンポ補修を行った経験が有りますが、すべてを新しく作成したのは今回が初めてとなります。
台紙(ボール紙)の厚さを変えることで、多様なタンポ作成が可能です。ピッコロのタンポは小さい為、少し苦労しましたが、フルートのような大きさのタンポ(こちら)なら容易に作成することができそうです。
参 考:
スキンは一旦水分に触れると大きく変形してしまいます。特に手順⑤の状態では、絶対に水分と接触させないようにくれぐれも注意してください。又、前記の作業が終了し、次のタンポ作成を行う前には、必ず毎回ガイド治具やトレイ内の水分を綺麗に拭き取るようにしてください。
スキンと基本構造のセット
ピッコロのような小さなタンポの場合は、手順④で使用する水差し(100円ショップで購入した醤油差し)で適量の水を調整するのが難しく、針無し注射器(プラスチックシリンジ)やスポイト等を使用すればもっと作業が捗(はかど)ったかも知れません。
手順⑦にあるスキンの糊付けで使用する工具(ヘラ)は、ステンレス製の丸棒(φ4mm×長さ180mm位)の先端をハンマーで平らに伸ばした後、このような形状に加工しました。マイナスドライバーの先端を斜めにしたような形状で角がないようにR面取りを行います。もう一方の端も同じ形状で、小さなタンポの糊付けにも対応できるように、平らな部分を少し細めに加工してあります。
尚、この金属ヘラは、以前フルートのタンポ補修用に作成したものなので、ピッコロ用のタンポの場合は、先端をもっと小さくしたものが使い易いと思います。
タンポの隙間調整とキーの組み立て
 タンポとトーンホール間の隙間調整とキーの組み立てを行います。
キーの多くはアセンブリになっており、タンポ調整では何度もキーメカニズムの取り外しと再組み立てが必要となる場合が有ります。組み立ての手順を判り易くする為に、各キーのアセンブリを6つのグループに分け各々に番号付けを行いました。
ここでの組み立てや調整の順序は、成り行きで行ったもので根拠のあるものでは有りません。但し、その順序によっては以後の組み立てに支障が出る場合が有ります。
Piccolo Key Assembly No.
ASSY-1
このピッコロの古いタンポを取り外した時、タンポ皿とタンポの裏面に茶色の材料が付着していた為、製造時には直接タンポ皿にタンポを固定していたもと思われます。
しかし、今回は自作のタンポであり、現時点では未だこのピッコロの適正なタンポの高さが不明なので、取り敢えずタンポがトーンホールを塞ぐポイントが適正かどうかを見極める為に、内側よりの「ASSY-1」A♭(G#)キーから作業を始めました。
尚、このパーツは、入手時からレバーの動きが悪かった(多分、落下によるダメージ)のですが、軸芯の歪みを少し修整する事でスムーズに動作するようになりました。
① シェラックの準備

タンポ皿にタンポを固定するには、シェラックと呼ばれる樹脂製の接着剤を使用します。
このようなスティック状になったものを細かく削ります。
② シェラックを溶解

タンポ皿にほんの少量のシェラックを乗せ、バーナー(ライター等)で加熱溶解します。
火傷をしない為に、工具を使用してキーをホールドする方が賢明です。
③ 薄い紙(シム)を固定する

タンポサイズに切り取った紙(シム)をタンポ皿に固定します。
ここでは、コピー用紙を使用しましたが、タンポとトーンホールの当たり具合により紙厚を調節します。
④ タンポをセット

タンポ皿にタンポを入れます。但し、未だスキマの有無を確認していないので、先ずは入れるだけにしてキーを組み立てます。
⑤ スキマを確認

薄いスキミゲージをタンポとトーンホールの間に差し込み、キーを閉じた状態でタンポ皿全方向のスキマの有無を確認します。
ここでは、一定の圧でクランプされているようです。
⑥ 糊付け

キーアセンブリを取り外し、タンポ裏面にでんぷん糊を塗布し接着固定します。
(心配ならもっと強力な接着剤で...)
もし、手順⑤でスキマが有った場合は、手順⑥でのタンポ接着は行わず、該当する紙厚のシムをもう1枚追加糊付けし、キー組み立て後、再度スキマの有無を確認します。
ピッコロのタンポは、トーンホールとの接触面が小さい事もあり、どれも比較的調整が容易かと思われます。又、これも独自の見解となりますが、小型のタンポは、最初は少し厚めに設定しておき、キー取り付け時に押さえ込むことである程度の気密性が得られるようです。
勿論、タンポ表面が同時にトーンホールを塞ぐような調整方法が基本で有り、タンポ後部(キー支点側)が先にトーンホール面に接するような状態は良く有りませんが、タンポ厚を適正に設定すれば、手順⑤で図示されるようなシビアなスキマ調整(全方向)を行う必要は無いのかもしれません。
⑦ タンポ表面のシワ取り

タンポヘラ(自作工具)を暖めタンポ表面のシワを取ります。タンポ表面は予め水で少し湿らせてください。
タンポヘラは暖め過ぎないように注意してください。
⑧ トーンホールに馴染ませる

組み立てたら、もう一度、タンポ表面を少し湿らせ、このようにバネ圧より少し強めに押さえ込み、トーンホールに馴染ませます。
念のために、もう一度スキミゲージでクランプを確認します。
タンポは、シェラックを使用して直接タンポ皿に固定する方法が一般的のようですが、熱により膨張したり変形する懸念が有り、個人的な好みとなりますが、このシムを介してタンポを接着する方法で、以後の各ASSY組み立て調整を行うことにします。
又、タンポ径が小さい為か、表面の皺(シワ)は、殆ど見当たらないので以後はタンポヘラによるシワ取りは省略しました。
ASSY-2
① タンポを固定する

F・E・Dキーのタンポをセットし、「ASSY-1」と同じく手順②~⑧(スキマ確認とタンポの固定)を行います。
ここでも、新たなシムの追加は有りませんでした。
② トーンホールに馴染ませる

組み立てたら、もう一度、タンポ表面を少し湿らせ、このように少し強めに押さえ込み、均等にトーンホールに馴染ませます。
念のために、もう一度スキミゲージでクランプを確認します
ASSY-3
① タンポを固定する

C・A・Gキーのタンポをセットし、他のASSYと同じく手順②~⑧(スキマ確認とタンポの固定)を行います。ここでも、新たなシムの追加は有りませんでした。
② トーンホールに馴染ませる

組み立てたら、もう一度、タンポ表面を少し湿らせ、このように少し強めに押さえ込み、均等にトーンホールに馴染ませます。
念のために、もう一度スキミゲージでクランプを確認します。
ASSY-4
① タンポを固定する

ブリチャルディーキーとBキーのタンポをセットし、他のASSYと同じく手順②~⑧(スキマ確認とタンポの固定)を行います。
ここでも、新たなシムの追加は有りませんでした。
② トーンホールに馴染ませる

組み立てたら、もう一度、タンポ表面を少し湿らせ、このように少し強めに押さえ込み、均等にトーンホールに馴染ませます。
念のために、もう一度スキミゲージでクランプを確認します。
ASSY-5
① タンポを固定する

E♭(Dis)・Dトリルキーのタンポをセットし、他のASSYと同じく手順②~⑧(スキマ確認とタンポの固定)を行います。
ここでも、新たなシムの追加は有りませんでした。
② トーンホールに馴染ませる

組み立てたら、もう一度、タンポ表面を少し湿らせ、このようにバネ圧より少し強めに押さえ込み、トーンホールに馴染ませます。
念のために、もう一度スキミゲージでクランプを確認します。
ASSY-6
① タンポを固定する

E♭キーのタンポをセットし、他のASSYと同じく手順②~⑧(スキマ確認とタンポの固定)を行います。
ここでも、新たなシムの追加は有りませんでした。
② トーンホールに馴染ませる

組み立てたら、もう一度、タンポ表面を少し湿らせ、このようにバネ圧より少し強めに押さえ込み、トーンホールに馴染ませます。
念のために、もう一度スキミゲージでクランプを確認します。
各キーアセンブリを組み立てを終えたら作動部分にキーオイルを注します。オイルは注し過ぎないようにし、キーの表面や管体に付いたオイルは完全に拭き取ります。その後、数回キーを動かしてオイルを馴染ませるようにします。
◆ ◆ ◆
キーアセンブリの各所にある薄いコルク製のクッション(緩衝材)が老朽化し、取れて無くなっている部分が有った為、この際、交換することにしました。(材料は、前記ジョイントコルク交換時の薄いコルク板を切り取りボンドで接着)
このパーツの役割は、運指時のノイズ防止(消音)だけでなく、キーの開き具合に深く関わっており、コルクの厚みを修正する為に何度も再組み立てを行う事になりました。
接着したコルクの厚みはキーの開き具合が十分に確保され、且つ均一になるように、紙ヤスリなどで少しずつ削って調整を行います。
キーアセンブリのクション材の交換
キー開閉制御用スプリング
ピッコロの各キー開閉動作は、細くて強靱な1本のスプリング(バネ)によって制御されており、各キーは、常に穴を塞ぐように作動するものと、常に穴が開くように作動するものとが有ります。キーの開閉制御は、力を加えると変形し力を除くと復元するスプリングの性質(弾性力)を利用して行われます。
 それらキー開閉制御用スプリングの位置、及びキーメカニズムとの関連についてまとめてみました。
6.1 各スプリングの位置とスプリング番号
下図のように、歌口側から管尻側までのスプリングに番号付け(01~14迄)は、内側に接しているもの優先しました。
キーの開閉制御は、力を加えると変形し力を除くと復元するスプリングの性質(弾性力)を利用して行われます。
赤いライン がスプリング、 印は各スプリングを固定した側、 印はスプリングが作動する側を表しています。
図1: ピッコロのスプリング番号 (拡大図
6.2 ピッコロの穴番号
ピッコロには大きさの異なる穴が全部で15個有ります。これらの穴の開閉(運指)により、オクターブの音律が作られていますが、各スプリング番号がどの穴位置の制御に関連しているかを確認する為、穴番号を下図のように表しました。
スプリング番号と同じように歌口側から番号付けをすると穴位置が接近している場合に順序の判別できない為、番号付けは表面側のカウントを優先しました。
図2: ピッコロの穴番号
6.3 各スプリングのキー動作表
下表は、各スプリングがどのようなキー形状、及び穴の開閉を制御しているかを表しています。
ピッコロに於ける各スプリングのキー動作表 ( 色表示部分は関連するキーの形状)
キー開閉の状態 関連する穴番号 スプリングが制御するキーの形状
SP-01 常に閉じるように作用 12
SP-02 常に閉じるように作用 11
SP-03 常に開くように作用 1
SP-04 常に開くように作用 3
SP-05 常に開くように作用 2
SP-06 常に開くように作用 4, 5
SP-07 常に開くように作用 13, 14
SP-08 常に閉じるように作用 15
SP-09 常に開くように作用 4, 5
SP-10 常に開くように作用 6, 8
SP-11 常に開くように作用 7
SP-12 常に開くように作用 6, 8
SP-13 常に開くように作用 9
SP-14 常に閉じるように作用 10
注: ブリチャルディキー(左手親指でB♭音を出す時に使用)を単独で押さえた場合は、SP-05が制御するキーと連動します。
又、SP-10が制御するキーを単独で押さえた場合は、SP-05が制御するキーと連動します。
連結機構により複数のトーンホールを制御しているキーも存在しますが、ここでは個々のスプリングが直接作用するキー形状のみとし、各キー動作のメカニズム(連結部やストッパー等)については、このページでは説明していません。
下図は、各キーのスプリングを適正な位置にセットする為の工具です。100円ショップで見付けたハンダ付け用の補助ツールを改造したもので、左側の先端は当初フォークのように少し曲がっていましたが平たく伸ばし、右側はスリット状に加工して有った片側を切り落としもう一方をこのような形に曲げました。
スプリング掛け工具
キーを解体し管の磨き清掃を行った際、幾つかのスプリングが少し曲がってしまったこともあり、確実に作動するようにとスプリングの作動方向を意識して組み立てました。その為、各キーのバネ圧設定が全体に強めになっているかも知れません。
バネ圧に見合った強さでキーを押さえた時、音の掠(かす)れは無いようなので多分トーンホールは上手く塞がれているものと思われます。
エピローグ
 先に行ったフルートリペアに比べて、タンポとトーンホール間の隙間調整が比較にならない程簡単に思えました。
フルートの隙間調整では、扇形に切り取る調整紙のほんの僅かな大きさや厚みの違いで隙間が上手く塞がらず、何度もキーを取り外しての再調整を試みましたが、ピッコロの場合は、それら再調整作業を行うこと無く完了しました。
自作したタンポの厚みがこのピッコロの基準に近かったことや、比較的均一に作成できたこと、或いは、トーンホールとの接触部がフルートに比べて小さいことに起因しているのかも知れません。
プロのリペアマンのような微細な調整のテクニックを駆使したものではないので、最良のパフォーマンスとは言えませんが、低音から高音域(自身の)までスムーズな音出しができます。
 ピッコロの運指表 (参考資料)
 ピッコロの各部名称 (参考資料)
フルートのリペア同様に、このページで紹介した自己流のスキルは、所謂ハイレベルなものでは有りませんが、ジャンク品として入手したものが少なくとも楽器と呼べるものになったことに満足しています。
リペア完了!
Piccolo Repair by Shuji Kusakabe
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