1.ファイフについて
ファイフはピッコロに似た小さな横笛です。発祥は中世ヨーロッパとされ多くの場合、軍隊やマーチングバンド等で使用されました。`Fife´を英和辞典(岩波書店)で調べると、やはり「横笛」となっており、この呼称は単なる小さな横笛を表す名詞のようです。
ファイフの演奏者はファイファー(Fifer)と呼ばれ、フランス近衛軍鼓笛隊の少年を描いたとされているエドゥアール・マネ(1832-1883)の油絵`笛を吹く少年´でもお馴染みです。
Edouard Manet (1832-1883) The Fifer
2.ファイフの特徴 (私見)
ファイフ (FIFE) は、現在2つの楽器メーカー(Yamaha&Aulos)が、この商品名で販売しており、何れもABS樹脂製のもので比較的安価で購入することができます。
◆ ◆ ◆
YAMAHA FIFE (YRF-21)
YAMAHA FIFE (YRF-21)
YAMAHA ファイフ運指表
スケールはHigh-C、基本的にはC5~C7まで約2オクターブを出すことができます。付属の運指表には、もう少し高い音(E7)まで表記してあり、頑張れば出すことも可能かと思います。
メーカーHPでは各種のリコーダーと同列の扱いとなっていますが、リコーダーの運指とは少し違っているようです。半音以外の運指は、むしろ一般的なフルート(ベーム式)やピッコロに似ています。
一応、全ての半音にも対応していますが、当サイトで紹介しているリコーダー運指フルートのように、第1指穴(右手小指)が小さく、半音を出す(指穴を半開きにする)際のポジショニングに少々難が有ります。
運指表通りに音を出してみたところ、ナチュラル音は、ほぼ正しくチューニングされていますが、一部の半音はそのままの運指では無理があり、メリカリ技法(歌口と唇の位置関係を変化させ音高をコントロールする)など演奏上のテクニックが必要となります。
歌口は、現在では珍しい波型(なみがた)の形状となっていますが、多分、小中学校の音楽教育用に作られた楽器であることから、音の出し易さやボリュームを考慮したものと推測します。
本体裏側にある穴 (左手親指で押さえる)は、リコーダーのようなオクターブ・ホールではなく、フルートの左手親指のブリチャルディー・キーのような機能(これを開けるとC、押さえるとB)となります。
下図はYamaha Fifeの各部寸法を測定したものです。(測定器具が貧弱な為、正確な測定値では有りません)
小さな指でも押さえ易くする目的からか、指穴位置が、それぞれの指方向に少しオフセットされていますが、それらの寸法測定は行いませんでした。
YAMAHAファイフの各部寸法(参考)
AULOS FIFE (C-21)
AULOS FIFE (C-21)
AULOS ファイフ運指表
このファイフは、教育用リコーダー『AULOS/アウロス』で知られるトヤマ楽器製造株式会社製のものです。
スケールはHigh-C、基本的にはC5~C7まで約2オクターブを出すことができます。付属の運指表には、もう少し高い音(E7)まで表記してあり、頑張れば出すことも可能かと思います。
やはり、このファイフも一部の半音はそのままの運指では無理があり、メリカリ技法(歌口と唇の位置関係を変化させ音高をコントロールする)など演奏上のテクニックが必要となります。
歌口は頭部管に直接開いており、前記(Yamaha Fife)のようなリッププレートは有りませんが音出しはスムーズに行うことができます。
第1指穴(右手小指)がYamaha製ファイフに比べ約10mm程歌口側寄に有り管尻端よりの距離が長くなっています。その為、指穴径が少し小さくなり、半音を出す際(指穴を半開きにする)のポジショニングがより難しく思われます。
Yamaha製ファイフとの外見的な違いは、こちらの方が管サイズが約3mm程太くなっている事と、右手人差し指のトーンホールがダブルホール(1つ開けるとG♭、全開でG)になっている事です。クロス・フィンガリングによるファイフ運指と比べると、若干この方が正確なピッチとなるようですが、この優劣は演奏者の好みの問題ではないかと考えます。
下図はAulos Fifeの各部寸法を測定したものです。(測定器具が貧弱な為、正確な測定値では有りません)
右手小指と人差し指のトーンホールが上下にオフセットされていますが、それらの寸法測定は行いませんでした。
AULOS ファイフの各部寸法(参考)
TOYAMA FIFE (Pipit/Old model)
TOYAMA FIFE (Pipit)
TOYAMA ファイフ運指表
このファイフも、トヤマ楽器製造株式会社製のものですが、商標名『AULOS/アウロス』の表記が無く、これは前記(C-21)より以前に製造された旧モデルのようです。
スケールはHigh-C、添付されている運指表には、C5~E7までの記述が有ります。
歌口はリッププレート風にキャスティングされていますが、管外径と比べて膨らみも少ない為、単なるプリテンスのようです。
前記のファイフ(Yamaha&Aulos)に比べると内径が大きく管体はピッコロのようなデザインとなっています。
運指はYamaha製のものと若干違っており、前者は DとE♭を除く殆どの運指で第1指穴(右手小指)をクローズ(塞ぐ)するのに対し、このファイフは、BとC、及び、G♭とD♭時のみ第1指穴をクローズ(閉じる)、他の運指では、全て第1指穴をオープン(開く)としています。
下図はToyama Fifeの各部寸法を測定したものです。(測定器具が貧弱な為、正確な測定値では有りません)
右手小指のトーンホールが少し手前にオフセットされていますが、それらの寸法測定は行いませんでした。
TOYAMAファイフの各部寸法(参考)
3.指穴位置の全長比率と指穴径の管径比率
以下の表は、Yamaha Fife (YRF-21)、Aulos Fife (C-21)、Toyama Fife (Pipit) に於ける各指穴位置の全長比率と各指穴径の管径比率です。
指穴位置の全長比率は、ファイフ全長(反射板~管尻間)に対する各指穴位置の比率、指穴径の管径比率は、ファイフ内径に対する各指穴径の比率です。尚、管径比率は、管内径のテーパー(*)により変化する各位置の推定内径から算出しました。
*(Yamaha Fife≒1/50 ・ Aulos Fife≒1/60 ・ Toyama Fife≒1/70)
Yamaha Fife (YRF-21)
Aulos Fife (C-21)
Toyama Fife (Pipit)
Aulos Fifeのダブルホールは、他のファイフの位置データに合わせる為、単一のホール(指穴№4)としました。
下図は、各ファイフの指穴位置(ファイフ全長に対する各指穴位置の比率)を比較したものです。
それぞれの外観を比較すると、Aulos Fifeの管尻端~第1指穴間寸法が他のものより長いデザインとなっていますが、その全長比率から長い分だけ(約3%)を減ずると、3種類のファイフの指穴位置(全長比率)に余り差が無いないことがわかります。
後日、竹材を使用してファイフを自作してみました。(比較的管体の形状が似通ったToyama Fifeのデータ表を使用)
inserted by FC2 system